徐ろに男が、築40余年木造襤褸文化住宅なる私の部屋の扉を蹴破り、土足の侭にて乗り込まれれば、傍若無人極まりなき振る舞いにて、万年床たる布団なんぞ捲り「ワレ何処に隠したんじゃ、こらっ!」何かを探し回られれど、果たして何を探されしやら、こちとら見当も付かぬ様にして、そもそもこの失礼極まりなき輩は何者ぞ。この輩に全く以て心当たりなければ、こちらも次第に腹も立ち来れば「ほんでおんどれは何勝手に上がり込んで荒らしてくれてケツかっとんねん?」然れば曰く「使用済みコンドーム」なりけりて、想像だにせぬ解答に思わず拍子抜け、成る程「戦意喪失せり」とは、正に斯様な心持ちならん。使用済みであれ未使用であれ、斯様な代物不要なれば、幾ら探し回られれど徒労に終わるが道理、無駄な事は止めなはれ。斯く穏やかに諭さんとすれど、コンドーム不要なんぞ到底信用し得ぬと、愈々疑われれば、何を思われしか、懐よりショッキングピンクに彩られし海鼠の如きを取り出せば、闇雲にこちらへ投げ付け始める始末、驚くべきは、懐より取り出されるその妖し気な色合いなる海鼠の如しが、湧き上がるが如く無限に現れれば、僅か4畳半なる私の部屋なんぞ、一瞬にして、ショッキングピンクの軟体動物の如しに埋め尽くされ、而してそのおぞましきが蠢く様、凡そ賽の河原なんぞ想起すべきか。
堪らず窓より飛び出せば、在るべき隣家消失され、何故かしら木塀に囲まれしドン突きの路地なりて、まさしく袋の鼠万事休すと思われし刹那、ドン突きたるべき木塀は隠し回転扉と相成り、ぐるり回りて抜け得れば、有閑マダムの如き三十路半ばの女性が、椅子に座しこちらに正対されるや、艶やかな微笑を投じられ、圴か突如胸さえ開けられれば、豊満とは云えねど貧弱にもあらざりし乳を放り出され、思わずたじろぐ私に対し手招きされるや、有無を云わさず己れの乳を舐らせる様にして、最早何が何やら意味不明理解不能たりし私は、この際されるが侭に身を任せるしか術も無し。突如右の乳が、私に舐られる左の乳に「舐り具合は如何なものか?」と尋ねれば曰く「知るべきは知れども極めるには至らず」斯くして右の乳へと至りしは、数年に及びし修練を経れど、遂には此処に無慈悲乳舐流開眼せり。御免。
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無慈悲乳舐主水之介
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