午前5時起床、果たして時差ぼけや否や、是未だ判然とせぬ様ならん。本日は「Baignade Toujours Interdite」フェスティバル会場にて、ソロ演奏のみならず、サウンド・インスタレーションたる「Guitar Soundscape」の展示も行う予定なれど、昨日の雨模様は今朝も雨雲を空に侍らす次第にして、今にも泣き出さんとさえ思われれば、当初の予定たる野外に展開するは絶望的ならん。昨夜オルガナイザーBejaminの提案にては、屋根が施されしバーのテラス部分にて展開すべしとの事なれど、いやはや折角なれば野外をと望むは当然の理ならん。午前9時より「Guitar Soundscape」のセッティングすべしと伺えば、投宿先たる Stefany邸を後に、会場まで続く川縁を行かん。
ボートも停泊しておれば、何でもこの界隈は、体長2mを超える大鯰が釣り上がる事にても有名なりけりて、水辺の鳩さえ襲い食らう動画すら投稿されれば、興味ある御仁はこちらを御覧じられたし。
今月下旬には、この界隈にて、あのレコメン系フェスティバルR.I.O.開催されるものなれば、会場内にてポスターも見受けられれど、Soft MachineなんぞSoft Machineにあらずして、こんなもん観てホンマにオモロいんかいな?そもそもプログレ系バンド再結成にすれど、Demetrio Stratos抜きAreaやら、Mauro Pagani抜きP.F.M.やら、それって何の価値あるねんな。
会場内にては、僅か€5.00にて生牡蠣1皿+白ワインなる、素晴らし過ぎなる朝飯セットが用意されれば、皆様大いに生牡蠣を堪能されれど、如何せん私は、僅か数ヶ月前なる過ぐる6月、Toulouseにて生牡蠣に見事中り苦悶させられし経緯あれば、またしても中る可能性大なりけりて、本日出番にあらざれば、多少のリスク大いに結構と生牡蠣を堪能せんと思われれど、本日はソロ演奏と「Guitar Soundscape」も行わねばならぬ故、ここは敢えて自粛、Saul君達が美味そ気に食らう様を、只管羨望の眼差しにて眺むるばかり。
結局雨が懸念されれば「Guitar Soundscape」は、全プログラム終了後、バーのテラスにて展開すべしとの段取りと相成れど、インスタレーションなれば、せめて本日丸1日展開してこそ意味もあれば、些か微妙な気分なれど、これもまた致し方なし。斯くしてソロのサウンドチェックの時刻と相成れど、こちらも雨天を懸念すればこそ、野外メインステージを屋内へ移設、ギターアンプ2台+ベースアンプ1台を準備して頂き、早々にサウンドチェック完了せり。
本来の屋内ステージにては、アメリカの前衛サイケデリック・ヒップホップバンドTalibam!登場、そもそもキーボード&ドラムなるデュオ編成の先鋭サイケバンドたりし彼等なれど、ツアー中にドラマーが足を怪我せしを契機に、何気にラップを始めれば、それがいつぞや見事にミックスされ、何やら奇々怪々意味不明な音楽性へと変化されにけり。思わず想起せしはNANI君辺りが抱かれる感覚か、ほならヒューマンシャワーと対バンしたらオモロいかもな、ふと脳裏を過れり。そのTalibam!のライヴ動画、例えばこちらにて。
この「Baignade Toujours Interdite」なるフェスティバルにて、私はソロを以て、光栄にもヘッドライナーを務めさせて頂けば、例のボーカル入りなる即ち「Lost Milky Way」を含む1時間のセットを披露、終演せし際に客席を見渡せば、皆様何とも至福感に満たされしが如きにして「素晴らしい旅でした」と口を揃えて述べられれば、こちとらミューシャンの本懐かな。
結局サウンドインスタレーション「Guitar Soundscape」は、天候不順及び諸般の事情により、本日の展示見送られる顛末と相成れば、オルガナイザーBenjamin曰く「天気の良い時に是非もう一度」斯くして海外にて初披露せんとせし「Guitar Soundscape」残念乍ら今回は実現せず、是非とも次なる機会を見付け挑まん。
天候不順なればこそ「Guitar Soundscape」キャンセルされにけれど、皮肉にも、キャンセルが決定するや、突如素晴らしき青空を仰げば、勘弁してくれや。
朝飯たりし生牡蠣+白ワインのセットも、昼飯たりしソーセージのトマト煮も、見事食い逃せば空腹至極、既に会場の撤収作業を開始されし関係者及び、今宵も会場内キャンプ地にて逗留される出演者に用意されし、所謂賄いたる「骨付きチキンカレー+トマトとモッツァレラチーズのサラダ」を、ひとりフライングにて頂けば、そもそも刺激物を然して嗜好されぬフランス人なればこそ、嘗てフランスに於いて食らいしカレーとは、語るも憚られる程に、珍妙不可思議なる前衛的カレーと云えば聞こえも良からん、何とカレーの風味なんぞ皆無たりし単なるトマト煮込みの如き代物にして、然れど今回のこのこれは大いに美味「骨付きチキンカレー」に関せば、カルダモンの風味も芳しくして、辛味こそ皆無とは云わずもがななれど、大いに美味なれば驚愕させられし次第。毎度所謂「欧風カレー」について綴れば、今更詳細割愛させて頂けど、そもそもマッシュルーム入りにして生クリームなんぞ含有せんとする「欧風カレー」たる代物なんぞ、此処欧州には存在せずして、全ては国内カレーメーカーに因る捏造と知るべし。
今宵は此処Albiにて、旧友Saul君と彼女Fannyさん宅に投宿させて頂くものなり。2人共来日経験あれば、次回は2人して日本を訪れたしとの事。
午前4時起床、Saul君達の消灯健全にして早ければ、昨夜は深夜12時頃に就寝すればこそか。Saul君の寝巻は浴衣にして、なかなか似合うておられれば、まるで温泉宿気分ならんや。
朝飯を御用意下されば、流石は南仏にして、況してやスペイン系の血流を酌むSaul君なれば、カリカリに焼き上げしトーストを以てトマトを摺り付け、オリーブオイルを垂らし岩塩少々、何せトマトは庭にて摘みしばかり新鮮至極、素朴な味わいなればこそ大いに美味なり。
Saul君愛用の林檎皮剥きマシーン、驚愕の一品にして、帰国前に再び南仏滞在予定なれば、その際に是非購入せんと誓うものなり。
昼飯はFannyさんが拵えて下されば、献立は「白身魚のフライ+カリフラワーのタイ風ココナッツミルク和え+巨大豆のボイル+ライス」なり。白身フライには唐辛子ペーストを添え食らえど、まさに白身フライなれば大いに美味。因みにこちらにては、パン粉なんぞ売られておらねば、御手前方にてパン粉を拵えるは当然至極なり。
何れも大いに美味、仏和辞典片手にされし御二人と、日本の話なんぞあれこれ交わしつつ、楽しき昼餐を堪能せり。
Saul君が、李と桃を以てサングリアの如しを拵えれば、今宵の御愉しみなり。
さて午後より観光へと御案内下されば、約1時間半のドライヴにて目的地たるへ辿り着きし次第。
大きなダムに面し聳える断崖絶壁、その頂にはオクシタンフラッグもはためく古城あり。
こちらがそのダムの由縁たるべく水力発電所、然れど均か到底発電所には見えぬ佇まいかな。
丘陵地に残る中世の街並を行けば、
道すがらキリスト受難劇のレリーフなんぞ連なれど、如何せんそのキリストの肉体が、美しき程に筋骨隆々マッチョなれば、思わず3人して失笑せり。
先程の古城さえ足下に見下ろす程に、山の頂まで上れば、立派な教会聳えるものなり。
隣接する墓地にて、南仏の墓あれこれを鑑賞、死後の世界観大いに異なればこそ、到底成仏し得ぬ程に、現世よりの哀悼ぶりを晒し伝えんとするばかりか。
頂上に立つ十字架。
その頂上より青空を仰ぐ。
残念乍ら花は結ばれておらねども、野薔薇の類いに依る天然のアーチか。
麓の中世の街並まで戻れば、休憩がてら一杯やらん。
果物売りのおっちゃんが、李を試食させて下さりしどころか、結局結構な数を下されば、いやはや有り難き限り、Merci。
Saul君宅へ帰還、今宵の炊事当番は彼が務めて下されば、
その献立は、ペンネの如きショートパスタを、オリーブオイルにて大蒜をじっくり煮揚げせしと和え、チーズを豪快に施し、庭にて摘みし新鮮至極なバジルを散らせし一品、名称不明悪しからず、更には「トマトとモッツァレーラのサラダ」なり。どちらも摘みたてバジルの風味激烈にして芳しく、揚げ大蒜の香ばしさと素晴らしき共鳴ぶり、大いに美味なり。そもそも私は、ペンネを始め所謂ショートパスタを忌み嫌うものなれど、イタリアにては禁断なるマカロニサラダ宜しく、アルデンテなんぞ糞喰らえとばかりにオーバーボイルされれば、摩訶不思議全く問題無しと相成るを知ればこそ、パスタをオーバーボイルされるが常なるフランス人の食卓にて、ショートパスタが登場すれど、一切問題無しとは当然の理なり。
昼に仕込まれしサングリアの如し登場、これは絶品至極、大いに美味なるかな。
投宿第2夜は、Saul君御自慢の自宅シアターにて映画鑑賞会催されれば、何とインターネット経由にて映画を上映、然ればフランスに於いては未だDVD化されぬ新作映画、マーク・フォースター監督作品「ワールド・ウォーZ(原題:World War Z)」を鑑賞せり。走るゾンビとは、私の世代にては「バタリアン(原題:The Return of the Living Dead)」なんぞが真っ先に思い浮かぶものなれど、流石はブラッド・ピット主演なる所謂A級ハリウッド映画なれば、特撮ならぬCG全開にして、如何せん常々カス映画としてのゾンビ映画ばかり堪能する私なんぞ、その余りに壮大にして豪華絢爛贅沢至極なる映像には、どうにも違和感拭い切れぬ有様、況してゾンビ映画なれどハリウッド映画的ハッピーエンドにて結ばれれば、後味の悪さも半端ならずして、いやはやゾンビ映画とは、望むべくはB級C級カス映画の拠り所たるべしか。
午前5時起床、均か思わぬ早さにて、果たして時差ぼけは克服されしや。本日はToulouseへ繰り出せし後、私の定宿たるLa Mami投宿の予定。
Saul君達と共に、いざToulouseへ。彼等の友人にして、前回はその新居引っ越しパーティーに御招き下さりしChristophとAnnの御二人と共に、彼等行き着けなるベトナム料理屋にて昼餐とせん。彼等全員よりの推薦にて、所謂ベトナム風混ぜ麺を所望、ナッツがふんだんに施され、鶏の唐揚げが添えられしを除けば、一見私の十八番たる混ぜ麺と、然して変わらぬ見て呉か。
いざ天地返しを以て豪快に撹拌、麺は所謂ラーメンなんぞの如きにして、つゆも所謂欧米にて食らう東南アジア料理然とせし甘めな味わいなれば、チリソースを所望し大量投下、然れど残念ながら私の十八番たる「東南アジア風混ぜ麺」には及ばざりしも致し方なし。然れどこの混ぜ麺そのものとすれば、充分過ぎに美味なれば、これも今や我流の味を極め過ぎればこその弊害か。
Christophに誘われ、界隈の公園にて卓球ならぬピンポンに興じん。
ピンポンにて盛り上がりし後、Christoph宅にて御茶休憩、然ればLa Mami主人たるBenjamin率いるプログレバンドaquasergeが、界隈のスタジオにて新譜のミックス中なれば、ぶらり御邪魔せし次第。キーボード奏者にしてマルチプレーヤーJulianは、Stereolab等にてもツアーメンバーを務める手練者にして、然れど常々妙に意気投合する仲なれば、久々の再会を祝せり。因みに発売間近なる彼のソロ新譜は、こちらにて試聴化なれば、興味抱かれし御仁は是非チェックされたし。
本日を以てミックス作業も完了されれば、皆して彼等の居城La Mamiへ。皆してあれこれ分業分担、
流石に常々共同生活を送られる次第なれば、その手際の良さは天晴至極。
私もンプロクッキングにて一品献上せり。冷蔵庫に眠りし使いさし白菜を筆頭に、カリフラワー、玉葱、トマトを大鍋にぶち込み、胡椒、山椒、月桂樹の葉、水屋にて発見せしヒガシマルうどんスープの素、即席Phoスープの素、大蒜なんぞを投下、些か水を注し蒸し煮にせんとすれば、冷蔵庫奥にて発見せし鮭切り身の残りもぶち込み、これにて「鮭と野菜のオリエンタル風蒸し煮」完成せり。Phoスープの素が、良き隠し味ぶりを晒せば、これは大いに美味なり。
Benjaminが拵えしアブサント・ベースのインプロカクテルなんぞ呷りつつ、皆して歓談。外へ出れば、まさしく降るが如き満天の星空、斯くして南仏の夜は更け行きし。
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河端一 solo@「Baignade Toujours Interdite」Rivières
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